日本の春を彩る花と言えば、梅や桜、蓮華、菜の花、つつじと言ったところでしょうか。
花の色や香りは様々ですが、どれも眺めているだけで心が落ち着いて来ますよね。
日本には地名に「つつじが丘」とつくところが多数あり、
地名にふさわしく公園などにつつじの花が植えられています。
つつじの花は私達にとって昔からとても身近な存在でした。
京都にも「つつじ園」と呼ばれるところがあって、
何と3000株ものつつじの花が所狭しと植えてあります。
場所は京都市内からひと山超えたところにある妙満寺と言うお寺です。
閑静な住宅地の中にあり、市内の観光名所から少し離れているため、
訪れる人はそれほど多くない穴場スポットです。
カラフルなつつじが咲き乱れるこのお寺は京都でも有数のつつじの名所に指定されています。
またここは、枯山水の庭苑「雪の庭」があることで知られています。
雪月花の三名園とは?
妙満寺は室町時代(1389年)、日蓮宗の日什大正師(にちじゅうだいしょうし)が
現在の烏丸五条付近に寺を建立したことに始まります。
その後度重なる火災が寺を襲いますが、その度に寺は洛中に再建されました。
豊臣秀吉の時代に寺町二条に移転してから400年あまり、
「寺町二条の妙満寺」と親しまれていました(お隣には歴史上名高い本能寺がありました!
少し余談ですが、今ある京都市役所の本庁舎は本能寺の境内だったそうです。
歴史の移り変わりを感じますね)。
戦後、街の発展とともに深刻化してきた様々な環境問題により1968年に
現在の地である岩倉に移ることになります。
妙満寺最大の見どころは、江戸時代前期の歌人で俳句の祖と言われる
松永貞徳(ていとく)の手による枯山水の庭苑「雪の庭」です。
江戸時代の俳人と言えば、松尾芭蕉や与謝蕪村が有名ですが、
松永貞徳は日本の古典文学に精通していて、俳諧(俳句)を庶民に広めた草分け的な存在です。
貞徳は若い頃、豊臣秀吉の右筆(ゆうひつ=武家の時代において公文書や記録作成を行う役を担う)としても活躍していたそうです。
そんな貞徳の門下生だった当時の妙満寺住職の頼みで「雪の庭」を造営することになりました。
江戸時代寺町二条の妙満寺には雪景色の美しい「雪の庭」、
東山にある清水寺には月見にぴったりの「月の庭」、
そして北野天満宮には梅花鑑賞の「花の庭」が作られ、
これら3つは「雪月花の三庭苑」として名を馳せていました。
雪月花とは、中国唐の時代を代表する漢詩人白居易(はくきょい)が詠んだ漢詩の一節
「雪月花の時、最もきみを憶う」に由来します。
そう言われてみれば貴族文化が花開いた平安時代、
雪月花を題材とした短歌や和歌が多く詠まれています。
百人一首にもこの3つを季語に用いた歌が数多くあります。
「雪の庭」はお寺が寺町二条から岩倉に遷堂された際、石組をそのまま移しました。
妙満寺がある岩倉は冬になると日本海から雪雲が流れ込んできます。
近年の温暖化で市内で雪が降るのは珍しくなってきましたが、
山に近い岩倉は年に数回銀世界に変わります。
真っ白に染まった比叡山を背景に、
しんしんと降り積もる雪に覆われた風景は時を忘れていつまでも眺めていたい光景です。
なお北野天満宮にあった「花の庭」は明治初期に取り壊されていましたが、
今年(2022年)再興されて150年ぶりに「雪月花の三庭苑」が揃いました。
時間に余裕があれば、清水寺の「月の庭」と北野天満宮の「花の庭」へも行ってみたいものです。
つつじが咲き誇るお寺
つつじは古くから日本人に親しまれてきた花の一つで、万葉集にも登場します。
花が筒状に咲くことからその名前がついたそうです。
色も白、紫、赤と様々で見ていても飽きることがありません。
比較的どこにでも植えられているので、子供のころに花の蜜を吸った経験がある方も多いのでは?
妙満寺は四季折々の花に包まれたお寺です。春には桜、秋には紅葉、
冬には雪景色と一年を通じて私達の目を楽しませてくれるところです。
中でも5月初旬から中旬にかけて境内に植えられた3000本ものつつじが咲き誇る様子は圧巻です。
5月の澄み切った青空にカラフルなつつじはインスタ映えすること間違いなしです!
また新緑の季節なので、緑の葉を茂らせたもみじも見応えがあります。
本堂のほぼ正面に位置する山門前から北門にかけてはつつじが咲き乱れています。
つつじの時期が終わると次は、睡蓮(5月中旬ごろから)や蓮(7月、8月)の花が
訪れる人を迎えてくれます。
素敵な御朱印を集めたくなる
神社を参拝した証としていただく御朱印は、
寺社によって異なるため最近ではオリジナリティの高い御朱印が人気です。
「御朱印巡り」と題して各地の寺社を参拝する人も多いようです。
確かに手元に残る何かがあれば、後々まで神社の細かいことを覚えていられそうですね。
妙満寺で通年いただける御朱印には手書きと印刷の2種類があって、
寺務所で受け付けてもらえます。
これとは別に期間限定の満開のつつじをモチーフに切り絵を施した
「切り絵御朱印」が今年の4月1日から5月31日の間まで販売される予定でしたが、
大好評で最終日を待たずに終了してしまいました。
そんなに人気の御朱印なら、もし来年もいただけるのであればつつじの開花と同時に
足を運んだ方が良さそうですね。
お寺の詳細
住所:〒606-0015 京都府京都市左京区岩倉幡枝町91番地
電話:075-791-7171
電車でのアクセス
叡山電鉄 :「木野駅」下車。徒歩5分
地下鉄烏丸線:「国際会館駅」下車。徒歩20分、バス5分
バスでのアクセス
京都バス(40・50系統):「幡枝(妙満寺)」にて下車すぐ。
京都バス( 46系統 ) :「幡枝」にて下車。徒歩3分
拝観料
本 坊 (本堂~雪の庭~展示室) 大人500円、大人(団体))400円、
小・中学生350円
境 内 無 料(※桜(4月上旬頃)とツツジ(5月上旬頃)の期間中、及び紅葉(11月下旬頃)の期間中は、本坊に境内を含めた寺域が拝観料の対象となります)
参拝時間
本 坊 (本堂~雪の庭~展示室) 9:00~16:00
境 内 6:00~17:00
以上妙満寺公式HPより抜粋 https://myomanji.jp/visit/access/index.html
まとめ
京都の観光はどうしても歩いて回る場所が多く、天気に左右されがちです。
風もなく穏やかな春の陽気に誘われて鴨川沿いを散策したり、
色づく紅葉を眺めながらお寺を巡るのが理想的ですが、現実はそうも言ってられないですね。
夏の京都は猛暑でお寺よりもカフェで休むことの方が多かったなんて方もいらっしゃるのでは。
ここでご紹介した妙満寺は中心部と比べると少しだけ気温も低く、
静けさを優先する方にとっては心落ち着く場所です。
春には見事な枝垂れ桜が訪れる人の目を楽しませてくれます。
桜の時期だけライトアップも行っていますので、
闇に照らし出された荘厳な桜を見てみたいものです。
さらに秋になると、境内のもみじが見事な紅に染まり、
高く澄み切った秋晴れの空に枝を伸ばすもみじを見に足を運んでみるのもいいでしょう。
どの季節に訪れても静寂な空気の中、
雄大な比叡山を眺めていると清らかな気持ちになれること間違いありません。
近くには妙満寺と同じように枯山水庭園の素晴らしい、
国の名勝にも指定されている圓通寺があります。
せっかくなので、こちらも併せて参拝するといいですね。
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