みなさんの一番好きな季節はいつですか。
日本のように四季がはっきりしている国は世界でもあまり多くないようです。
昔の人はそんな季節の移り変わりを和歌や俳句で表しました。
また日本の伝統行事の多くは季節と密接な関わりをもっています。
中でも京都はどの季節に訪れても違った顔を見せてくれ、
常に新たな発見がある街の一つだと私は思います。
事実、京都の街は一年を通じて観光客で賑わっています。
そんな京都の中でも特に、琵琶湖疏水記念館と平安神宮周辺にスポットを当ててみました。
琵琶湖疏水とは
琵琶湖は言わずと知れた、日本一大きな湖です(広さは669キロ平方メートル)。
滋賀県土の何と6分の1をも占めているそうです!
その琵琶湖から水を引いてくるのは、簡単そうに見えて緻密な計算と研究によるものでした。
桓武天皇が京に都を定めて以来、
1000年以上にわたって京都は日本の中心地であり続けました。
ところが明治維新で政治の中心が江戸(東京)に移ると、京都の人口は激減してしまいました。
廃墟のような街になることを恐れた当時の京都府知事、
北垣国道(きたがきくにみち)氏は年間予算の2倍の費用をかけて京都と大津を結ぶ
水路の建設に乗り出しました。
これが成功すれば必ず京都には以前のような活気が戻ってくると信じて…
時は明治18年、その頃の日本では重大な建築工事は外国人技師に委ねるのが普通だったのですが、
北垣知事に登用された田邉朔朗(たなべさくろう)氏と島田道生(しまだどうせい)氏を中心に、
設計から施工まで全て日本人の手による初の土木工事は5年の歳月を経て完成しました。
これによって衰退の一途を辿りつつあった京都の街には復興の兆しが見え始めました。
第一疏水の完成によって人々は飲料水、灌漑用水、(船による物資の)運搬などを確保しました。
また日本初の水力発電所「蹴上(けあげ)発電所」が建設されたことによって、
街に電気が送り込まれるようになりました。
道路や家々に電灯がともり、工場では機械による生産が始まりました。
明治20年代後半に入ると、年々増加する電力量や飲料水の質や量が問題となったことから
新たな疏水建設の話が持ち上がりました。
第二疏水は汚染を防ぐため全線を埋め立てトンネルで設計しました。
また上水道として利用するための「蹴上浄水場」の整備も進められました。
こうして明治の終わりには現在と同じく、浄水場から家庭への飲料水の供給がスタートしました。
明治から大正と言えば、急速に近代化が進んだ時代ですが、
その頃基礎を固めてくれた人達のおかげで今の私達の暮らしがあることを忘れてはいけないですね。
琵琶湖疏水周辺の観光名所
*京都観光の名所として挙げられる場所の一つに平安神宮があります。
平安神宮は、平安京遷都1100年を記念して明治28年(1895年)に創設された神社です。
調べてみて初めて知ったのですが、神社としては比較的新しいものなのですね。
それでも昭和4年に作られた大鳥居は国の文化財に指定されています。
完成当初は日本一高い鳥居だったそうです(現在は熊野本宮大社の鳥居が日本一高いものです)。
平安神宮の社殿を囲むようにして作られた「神苑」は、四季折々の景色が楽しめる場所です。
そこにある八重紅しだれ桜は川端康成や谷崎潤一郎も愛でたといわれる桜なので、
時期が合えば桜の季節に訪れてみたいですね。
また、平安神宮のすぐそばを流れる琵琶湖疏水には3月下旬から5月のGWの頃まで船が走るので、
船上から桜や新緑を眺めることもできます。
*平安神宮から徒歩15分ぐらいのところにあるのが南禅寺です
広大な敷地に散在する建造物や庭園は時間をかけてじっくり見学することをお勧めします。
新緑や紅葉の季節はもちろんのこと、夏には蝉しぐれと境内を流れる琵琶湖疏水の音が
混じりあって独特の「涼」を感じることができますよ。
琵琶湖疏水が南禅寺の境内を通るため、景観に配慮して作られたのが南禅寺水路閣です。
琵琶湖疏水と同じく田邉朔朗氏が設計したもので、
全長93メートルの水路閣の上を琵琶湖疏水が流れています。
古代ローマでは川から離れた場所まで水を運ぶために大がかりな水道橋工事が
領土の至る所で行われました。
2000年以上経った今でもヨーロッパの各地に当時の名残を留める水道橋を見ることができますが、この水路閣もそういったローマの水道橋からヒントを得たのかもしれませんね。
無鄰菴は一見の価値があり
第三代内閣総理大臣を務めた山形有朋(やまがたありとも)氏の別荘として造営されました。
近代日本庭園の傑作とうたわれるその庭には、琵琶湖疏水を利用した池も作られています。
ひっそりと建つ洋館では、日露戦争を前に当時の政治家達による対ロシア外交政策が
話し合われたのだとか。
あの伊藤博文も出席していたそうで、歴史の重要な場面を垣間見たような錯覚に陥りそうです。
母屋ではスタッフの方の手による抹茶も堪能できるので、
歩き疲れた足を休めるにもうってつけの場所ですよ。
琵琶湖疎水記念館について
京都観光といえばまず大半の人が神社仏閣巡りを思い浮かべるでしょう。
もし時間に少しだけ余裕ができたら、南禅寺に行く途中ちょっと寄り道をしてみませんか。
琵琶湖疎水記念館は1989年に京都市が開設した資料館で、
琵琶湖と京都を結ぶ水路の歴史を知ることができます。
3つのフロアーから成る館内には時代別に工事の様子や当時の人々の生活が
誰が見てもわかりやすく紹介されています。
京都市内の学校はもちろんのこと、
大阪や滋賀など近畿地方からも社会見学や修学旅行で毎年たくさんの学生さんが訪れるといいます。
開館時間
午前9時~午後5時
※入館時間は午後4時30分まで
※ドラム工場の見学時間は午後4時まで
入館料
無料
休館日
毎週月曜日(月曜日が祝日・休日の場合は翌平日休館)
年末年始(12月29日~1月3日)
住所
〒606-8437 京都市左京区南禅寺草川町17
電話
075-752-2530
FAX
075-752-2532
交通
地下鉄東西線「蹴上」下車徒歩7分
市バス5系統「岡崎法勝寺町」下車徒歩4分
市バス京都岡崎ループ「南禅寺・疏水記念館・動物園東門前」すぐ
※身障者用駐車場以外の駐車スペースはございません。
近くに京都市国際交流会館駐車場があります(有料)。
(以上、記念館の利用案内・アクセスのページから抜粋)
1000年の歴史を持つ京都。
徳川家が政治の実権を握っていた時代、政治の中心は江戸にありましたが、
天皇は常に京都に住まいを構えており、伝統芸能や文化が枯れることはありませんでした。
今でも細い路地に一歩足を踏み入れると、時空を超えた人々の息遣いが聞こえるような気がします。
京の街に再び賑わいを取り戻したい、
という願いの元建設された水路は今日私達の生活と切り離すことのできないものとなりました。
京都観光の合間に記念館に立ち寄ってその歴史に触れてみませんか。
何気なく目にする水の動きが違った角度から見えてくるかもしれません。
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