近頃密かに話題になっている正寿院(または風鈴寺)というお寺を聞いたことがありますか。
正寿院(風鈴寺)は滋賀県との県境に近い宇治田原にあって、京都駅から電車で約2時間、車でも1時間以上かかるアクセス不便な場所です。
京都観光プランを立てる際には、一日正寿院見学にあてる日を作った方がよさそうです。
京都は日本でも暑さの厳しい街で、夏の京都観光は正直辛いものがあります。
でも宇治田原は京都市内と比べると5度ほど気温が低いので、暑さとの戦いの京都観光に疲れた体を癒してくれるはずです。
逆に冬の宇治田原は最低気温が氷点下になる日も多いので、真冬の正寿院参拝は防寒対策をしっかりしなくてはいけません。
別名風鈴寺と言われる理由
正寿院は今から約800年前、塔頭(たっちゅう)寺院として建てられたお寺です。
塔頭とは、高僧が亡くなった後に弟子たちがその墓を守るために建てた塔や庵(いおり)のことをさします。
そんな正寿院は、「風鈴寺」としてネットでの話題をさらっています。
毎年夏になると正寿院では2000個もの風鈴が境内に飾られ、涼やかな音で訪れる人を迎えてくれます。
正寿院の夏の風物詩は、見る人を穏やかな気持ちにしてくれます。
全国各地から集められた風鈴が鳴り響く風鈴寺でもひと際目を引くのが、参道に続く花風鈴小径と呼ばれるところです。
ここには正寿院で製作されたオリジナルの風鈴が吊るされていて、涼しげな音色を奏でながら参拝者を迎えます。
それが正寿院が風鈴寺として親しまれている理由です。
またこの花風鈴小径はアジサイやヒマワリといった、夏を代表する花で彩られています。
毎年耐え難い暑さから、締め切った部屋でエアコンをつけて一日を過ごすのが当たり前になってしまいましたが、半世紀ほど前までは夏の暑さを乗り切る唯一の手段は扇風機でした。
窓は開けっ放しにしてあるので、蝉の声が一日中家の中に響き渡りました。
どこの家でもベランダや軒先に風鈴をかけて、そよ風に揺れる風鈴の音と蝉の声を聞きながら一日を過ごしました。
今ではコンクリート一色の道路ですが、昔は道端や家々の庭先には、必ずと言っていいほど朝顔やヒマワリが咲いていました。
そんな昭和を思わせる風景が風鈴寺には残っています。
また一言で夏といっても月によって咲く花が違います。
それと同じように風鈴寺に飾られる風鈴も月によって変わります。
今年は夏の初めはあじさい風鈴が、夏真っ盛りの8月はひまわり風鈴、9月になって秋の訪れを感じる頃はこすもす風鈴が境内を埋め尽くしています。
このように、移ろいゆく夏をテーマに飾る風鈴が変化するのも風鈴寺らしくていいですね。
夜間にはライトアップも行われるので、昼間見る風鈴とは一味違った幻想的な風景が見られます。
また風鈴寺の名にふさわしく、「風鈴の絵付け体験」ができます。
誰でも参加できて30分程で完成するので、あなただけのオリジナルの風鈴を作ってみませんか。
宇治田原という京都観光には少し遠い場所ですが、足を運ぶ価値は大いにありますよ。
ハートの窓が人気
風鈴と並んで正寿院には、他にも見るべきものがあります。
それは、宮殿にある「猪目窓(いのめまど)」というハートの形をした窓です。
猪目(いのめ)とは文字通りイノシシの目の形をしたハート模様です(イノシシの目はハートに見えるんだろうかという疑問もありますが)。
災いを防ぎ福を招くとされていて、昔から寺社の建築や装飾に広く使われてきました。
正寿院のハート形の窓は「幸せを呼ぶ窓」として知られています。
この猪目窓を通して、移り変わる四季の様子を楽しむことができます。
春は薄桃色の桜、夏は目を見張るほど鮮やかな新緑の緑、秋は燃えるように真っ赤な紅葉、そして冬はしんしんと降る真っ白な雪…
それぞれの季節の「色」がハート形の窓を通して宮殿の中に差し込んできて、和かな空間を作り出してくれます。
どれも自然豊かな宇治田原にあるお寺だからこそ見ることのできる自然の一面なのでしょう。
それともう一つ!
この宮殿(則天の間)では、猪目窓だけでなく天井にも目を向けてください。
見上げると、天井を埋め尽くすカラフルな絵が目に飛び込んできます。
300年も前に描かれた天井画の復興だそうで、花や日本の風景をテーマにした丸型の絵が鮮やかに描かれています。
その数はなんと160枚というから驚きです!
ハート窓に色鮮やかな天井画、お寺の持つイメージをいい意味で覆してくれますね。
また正寿院の本堂内陣には、江戸時代に描かれた曼荼羅(マンダラ)天井画があります。
こちらも是非見ておくといいですね。
可愛い御朱印を貰おう
正寿院の御朱印はその種類の多さとクオリティの高さからネットでも話題になっています。
しかも記帳は直書きです!
通年いただける御朱印から季節限定の御朱印もあり、どれにしようか迷ってしまいます。
ちぎり絵の御朱印、イラストは同じでも書いてある文字一枚ずつ違う御朱印など、他では見ることができないオリジナルの御朱印がたくさんあります。
もちろん値段も御朱印によって違います。
でも宇治田原まで足を延ばすのはちょっと…とためらってしまう方も多いはず。
正寿院はそんな遠方の方のために、郵送対応もしてくれます。
ホームページに詳しいことが載っているので、郵送を希望される方はこちらをチェックしてみてください。
既に御朱印をもっている方も、季節によって異なる御朱印や、期間限定の御朱印が出るので要チェックですよ。
また御朱印帳やお守りなども送ってくれるので、そちらも併せてどうですか。
正寿院の詳細
所在地 京都府綴喜郡宇治田原町奥山田川上149
コンタクト 0774-88-3601
アクセス *京都駅から直通便https://travel.mk-group.co.jp/tourkyoto/2021shojuin_sogei/
*京阪・JR宇治駅から「宇治茶バス」休日ダイヤ利用(12月11日まで)
http://kyotokeihanbus.jp/ (9月4日までは増便)
*京阪・JR宇治駅/近鉄新田辺駅→維中前バス停下車→タクシーで10分
(第一交通タクシー 0774-24-4000)
拝観料 風鈴祭り期間中は800円(通常は600円)
まとめ
ところで学生時代、歴史の教科書に載っていた仏師「運慶・快慶」という名前は記憶にありますか。
正寿院本院には鎌倉時代に活躍した仏師、快慶が手がけたとされる「不動明王坐像」が鎮座しています。
快慶は温和な表情の如来像を多く残していますが、正寿院に置かれている不動明王坐像は全身で激しい怒りを表現していることから、快慶の仏像としては大変珍しいそうです。
国の重要文化財にも指定されている不動明王坐像は、さまざまな願いを聞き入れてくれるとされています。
風鈴、ハート窓と爽やかで現代的な印象を受ける正寿院ですが、歴史上名高い仏師の彫った不動明王像があるあたりは、やはり京の都にふさわしい寺だと思いませんか。
宇治田原まで行くのは時間がかかりますが、そこに行くまでの景色や空気は通常の京都観光では絶対に体験できない魅力が詰まっています。
時間に縛られることなくおおらかな気持ちで行ってみたいですね。
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